ソロデビュー曲「どんでん返しはビッグチャンス!」
ソロ。
傷彦です!
バンドはいつだって最高さ。
だけど、他にもやりたいことがある。
僕にロックの素晴らしさを教えてくれた、
憧れのあの人への
リスペクトをたっぷりと込めた曲を作り、
一緒に演る。
僕の視点から見た一番カッコいいところを散りばめて。
僕だけのこだわりで。
メンバーを巻き込む訳にはいかないさ(笑)
レコーディングをしたのは
ほんのひと月半ほど前のこと?
ラジオで随分とネタバラシされたから
このBlogにも僕から見たレコーディング風景を書き留めておこう。
下丸子駅から徒歩5分。
そのスタジオの扉を開けて入って来た、
スラリとしたシルエット。
いまみちともたかさんだ。
…順を追って話をしようか。
初めて意識して聴いたのは
小学生の頃だったろうか。
運動会の応援合戦で「負けるもんか」を大音量で流して歌っていたクラスがあったのを覚えてる。
BARBEE BOYS。
小さな僕にとっては理解の範疇を越えたオトナっぽ過ぎる詞世界、山形の片田舎を一瞬でビル街に変えるほどの、曲の端々から溢れ出る都会の薫り。一筋縄ではいかないサウンドの凄さが分かったのはずっとあとのこと。
音楽雑誌だけでなく、一般誌でもよく見かけた、丸いサングラスにツンツンヘアの気になる人物。サウンドだけでなく、ルックスも鋭角的だ。
明らかに知能犯、このバンドの首謀者、主犯格、いまみちともたか。
何かのインタビュー誌面で、
「大切にしてるものは何ですか?」と
インタビュアーに訊かれ、
「ななめなハート」
って応えるような、そんな人。
キョーレツに印象に残った。
好きな曲ならたくさんある。
「泣いたままでlisten to me」
「はちあわせのメッカ」
「ごめんなさい」
「もうだいじょうぶヒステリー」
「ショート寸前」
もちろん「目を閉じておいでよ」
挙げればキリがない。
タイトルを並べただけで立ちのぼる匂い、
独特過ぎるメンバー編成、歌詞、曲、アレンジでヒットを連発するなんて!反則!
好きなのに、KONTAさんのキーが高くて歌えない曲ばかりでカラオケボックスでやきもきしたなあ…。
たくさんのミュージシャンに影響を与えながらも、誰も真似できない、追いつけない存在。
ザ・キャプテンズを始めてずいぶん経った頃、楽屋でケイ伯爵が「今日のライブ、いまみちさんが観に来ますよ」と僕に耳打ちした。
え?僕の知ってるいまみちさんて
あのいまみちさんしかいないんですけど!
果たして、
ライブがスタートしたら
かの人はフロアに、いた。すぐ見つけた。
だって目立ち過ぎる(笑)
あれは確か新宿ロフト。
最初の「ザ・キャプテンズです!」ジャーン!でモニターに足を掛け、登る。
いまみちともたかが、白黒のチェックのフロアに居る、柱を背にして。
目は合わなかったが、その口が「かっこいい」と動いた、気がした。僕らを見て…?かっこいい…?「いや、言ってないよ」って言われるのが怖くていまだに本人には確かめてないけれど(笑)。
あとで聞いたところ、ケイ伯爵はいまみちさんと以前から面識があったそうだ。共通の知人がいるらしい。
この日以降、いまみちさんがザ・キャプテンズのライブにたまに来たり、僕がいまみちさんのライブに行ったり、ゆるやかな交流が始まった。
いまみちさんのライブ会場では僕は出来るだけ前の席に陣取り、特に足元の機材を目に焼き付ける。願わくばツマミの目盛りまで。
TVや雑誌で見ていた、憧れのギタリストの
ピックさばきやエフェクターさばきを間近で見られる喜びよ…!
ヒトサライのアルバムにサインしてもらった時も嬉しかったなあ…。
そして2018年、
いまみちともたかさんのライブを南青山のHeavenに観に行き、その場で思い切ってオファーした。
「僕のソロをやろうと思ってるんですが、一曲ギターを弾いて欲しいんです!」
言うや否や、
いまみちさんは右手を高く挙げ、
「ハイッ、やります!」と即答してくれたんだ。
夢かと思ったね。
そこからが大変さ。
曲はだいたい作ってあったんだけど、
御本人に聴いてもらう、弾いてもらうのに半端なオマージュじゃいけない。
吟味に吟味を重ねた。
曲のデモをメールに添付して送ろうとして、
何度も躊躇った。
「どう思われるんだろう、この曲?不愉快に思わないだろうか」ってさ。
ましてや僕の拙い仮ギターが入っているんだぜ。ああ恐ろしい(笑)。
結局、デモ音源を送ったのは
オファーからずいぶん日にちが経ってしまってからだった。
BARBEE BOYSのオマージュだから当然男女デュエット。デモでは女性パートも僕が歌った。
いまみちさんから返信がきた。
「これ、半音キー下げてみないか?」
とのこと。
言われた通りに半音下げて歌を録り直してみると、たしかに聴こえ方が良い。
KONTAさんを意識するあまりに高過ぎるキーに設定してしまっていたようだ。反省。
録り直した音源をまたいまみちさんに送る。
今度は躊躇わない。
が、ふと気付いた。
「そう言えば曲自体の感想はメールに書いてなかったぞ…」
ドキドキ…。
歌詞には自信がある。
タイトルは「どんでん返しはビッグチャンス!」に決めた。
いまみちさんが使ってそうで使ってない言葉。それを探すためにBARBEE BOYSの歌詞カードを片っ端から見た。よし、「どんでん返し」は無い(笑)。
「負けるもんか」のような、
女性側が優位に恋愛を進める歌にしようと思った。男性側が逆転を狙って、やっぱり勝てねえや、みたいな。良く言えば惚れた女に花を持たせる、的な?
こういう歌詞はザ・キャプテンズには無いので、新鮮。
デモのOKが出て、まずは
ドラムベースのいわゆるリズム隊録音。
ベースは旧知の仲、信頼の置けるベーシスト、ホーリーにオファーした。
ベース録音の日にいまみちさんにメールしたら「今からスタジオ顔出していい?」とのお返事。フットワーク軽すぎないですか、レジェンド…。
そして!スタジオに到着するや否や、ドラムの音色やリズムパターンをビシバシと指定していくいまみちさん!
今回はあくまでもギタリストとしてのオファーだったのですが、その恐ろしく的確なプロデュースの指示出しにぐうの音も出ない!…というか有り難くレジェンドのお知恵を頂戴いたしました!いまみちさんいわく「ドラムマシンは人間様の真似しなくてよろしい!機械は機械らしく!」「はい!あえて無機的に、ですね!」「そう、その冷たい機械の上で人間がぶつかりあう」「はい!ギャップでお互いが引き立つんですね!」まるでプロフェッサーと大学生のようだ。こんな授業ならいつまでだって受けていたい。
しかし、出来る男は当然仕事も早く、またたく間に曲自体の薫りが方向付けられていったのです。
リズムが決定し、
ベースも歌も録り終えた。
いまみちさんによる仮ギター(贅沢!)も。
この時点で
僕の最初のデモとは大きく様変わりしている。
一番違うのはコード感だ。
僕はザ・キャプテンズの時の作曲の癖で、ベタなマイナーコードを多用していたのだが、いまみちさんはそれをルートを変えてのメジャーセブンスに置き換えていった。たしかサビ頭が当初はBmだったのが、Gmaj7に変換された。言われて、試しに僕がスタジオに転がっているクラシックギターを弾きながら歌ってみても、どうにも違和感が拭えない、というか正直言って歌いづらい。しかし!いまみちさんがギターを弾いてオケに当ててみるとその違和感がスッと消えるのだ!手元を注視すると、まず僕の押さえ方とボイシングが違うし、ピックの当て方で余計な弦を鳴らし過ぎないようにしているみたいだ。…これ、言うのは簡単だけど物凄い職人技です。とにかく、僕のいなたいベタマイナーから脱却した楽曲が、メジャーセブンスのアーバンな薫りを放ち始めたのです。
さて、女性ボーカルを誰にするか?
いまみちさんから、とあるミュージシャンの名前が挙がったが、結果的に僕の秘策が通った。
FM群馬のパーソナリティー、櫻井三千代さん。確信があった。必ずやこの曲にフィットすると。もともとの声質が華やかで良いし、声優的なニュアンスのコントロールと、ギターをやってるから音感も良いはず、との読み。
オファーしたら、しずしずと引き受けてくださった。有難い。これで役者は揃った。
3月頭に三千代さんの歌と
いまみちともたかさんのギター、コーラスをレコーディングすることに決定。
いまみちさんの希望は
歌が全部入ってから、それを踏まえてギターを弾きたい。
三千代さんの希望は
いまみちさんの前で歌うのは緊張し過ぎるから勘弁して下さい。
OK、スケジューリング。
三千代さんには午前中からスタジオに入ってくださいと伝え、
いまみちさんには午後からゆっくりいらして下さいと伝えた。
三千代さんは緊張しながらも、予想以上の素晴らしいニュアンスで歌を録り終えた。
いまみちさん到着。
荷ほどきをすると、出るわ出るわ、
大量のエフェクターが机の上に所狭しと並べられた!傷彦の大好物です。
しかも見たことのないようなブツばかり。ますます大好物です。
ひとつひとつ機能の解説を聴きたい…!と、いまみちさんを見るとすでにマッド・プロフェッサーの表情に!これはひょっとして人類を救うための壮大な実験なのか、はたまた黒魔術のための薬品を混ぜる作業なのか?と思わせるほど かつてなく集中した顔付きでエフェクターのツマミを回していく氏。
「…くんさあ。…傷くんさあ。」
ハイッ!?何なりと!プロフェッサー!
「ヴィヴラートのペダルさ、足で踏みづらいから、俺の合図で傷くんが押してくんない?」
ハハーッ!
見るとたしかにソファに座った体勢からは踏みづらい位置に置かざるを得ないBOSSのコンパクトエフェクター、ヴィヴラート(技クラフト)が。よし、初めての共同作業、絶対上手くやりおおせて見せる…!
「タイミングのイメージ的にはさ、俺がジャラーンとコード鳴らしたこの手を振りおろした先に足があって、自然にオンになる感じで」
お、オス…!何なりと。
「よし、じゃあ流してみて。」
エンジニアがエンターキーを押し、イントロが流れ始める、ギターが鳴る、コードを弾いておろした手の先…よし、今だ!オン!
「やっぱ違うな、もういいや」
エフェクター押すだけの仕事、傷彦は15秒でクビになりました。自分に絶望したよ。
他のエフェクターも駆使して多彩なサウンドをつくりながら、どんどん弾いて、どんどんアイデアが湧いて、どんどん音を重ねていくいまみちさん。
特に気になった機材は日本未発売だという、白いストンプ。聞けばピックアップの再現を目指したシュミレーターだと言う。オールドのレスポールのフロントP.U.から最新のヴァンヘイレンモデルのリアP.U.まで確かにそれらしいサウンドが出る!凄い!
食事も休憩も取らず、集中したまま弾き続けておよそ3時間。三千代さんとホーリーは身じろぎもせずにその光景を見ていたっけ。
僕は時々コーヒーメーカーで珈琲を淹れて、いまみちさんにも薦めたのだけど、ほとんど口にせず。
ギターを5本くらい重ねた頃かな。
音色もプレイのニュアンスも重ね方もセンス抜群!文句なし!
のところ、僕はひとつだけワガママなオーダーをさせてもらったんだ。
ラストのサビの直前のところに
付点8分のディレイギターフレーズを入れて下さい、と。そのために2小節ぶんブレイクにして空けておいたのです。
「バービーでやり尽くしたアレをやれってのかい?(笑)あのワザはある程度テンポ遅い曲の方がハマるんだよ。テンポ速いし、上手くいくかなあ…」
バッチリ上手くいきました。失神するほどカッコいい!
実際の音源で確かめてみてね!
そして、
このレコーディングをやる前から決めていたことがある。いまみちともたかさんのコーラスは是非入れたいと。BARBEE BOYSでは「クラリネット パラランポロロンピーポー…」くらいしかリードボーカルをとる曲はないけれど、ソロのライブや音源を聴いて、そのビターで色気のある声に凄く魅力を感じていた僕はデモを送った当初からコーラスをお願いしていたのだ。
ボーカル録音ブースに入ったいまみちさんを
TVモニターで見る。お、柔軟体操している。可愛い。サビの部分でコーラスを入れていただいたのだが、傷彦と三千代さんの声に混ざってなお存在感が強い。むしろいまみちさんの声、強過ぎるか?テイク2を録ってみよう。アレ?ちょうど良くなった!TVモニターを見ると、マイクから思い切って距離を置いて歌ってる!その手がありましたか。原始的だけど、効果的。学ぼう。
さて、恐るべきコンセントレーションによるギターREC、コーラスRECを終え、ひと安心。
…と行きたいところだが、
まだミックス、マスタリング作業がある。油断ならないぞ。
そして迎えたTD(トラックダウン。最終的な音質・バランスを決める重要な工程)の日。
配信ジャケットに使用する素材を撮影するため、スタジオにギターを持参して下さったいまみちさん。
ギターの撮影が終わったあと、おもむろにこう言った。
「ギターソロ、録らして」
え?
「せっかくギター持ってきたしさ。多分きっと、いや絶対面白いことになるからさ」
え?
いや、実際なったんですけど(笑)結論から言うと。
「あとさ、一番のあとの16小節、カットしよう」
はい?
今日は最終的な音質を整えて決めるTD…でしたよね…。アレンジの日でも録りの日でもないですよね…。
言われるがままに
16小節カットし、
一番サビ終わりですぐギターソロに行く構成に。
vox社製のユニークなギターを抱え、
内蔵のエフェクターも駆使しながら
妖艶かつシャープなギターソロを決める いまみちさん。
…バッチリだ!
一番終わりでギターソロを促すセリフを入れていたのだが、それも新しいギターソロのテンションに合うように録り直すことに。
「仕掛けるなら、今さ!」のひと言。
賢明な読者はお分かりだと思うが、いまみちともたかさんの愛称、と言うかあだ名?「イマサ」との掛詞。
これもね、デモの段階で入れておいたんだけど、勇気要ったな(笑)。本チャンレコーデングの際に怒られるかカットされるかと思ったけど、いまみちさん笑って受け流して下さったからホッとしたよ。
このセリフのニュアンスにはいまみちさんが結構こだわって、何度もリテイクした。
これ、上手く言えなかったらカットされる!と思って必死に頑張ったよ(笑)
かくしてレコーディング、TDとも終了!
最高の仕上がりとなり、みんなのもとに届いたわけです。
初オンエアはFM群馬で。
そして「バラ色☆王国」に国賓としてお招きしたいまみちともたかさんが喋り倒し、ドッカンドッカンウケることになるのですが、それはまた別のお話。
いずれ語る機会もあるでしょう。
どうぞお楽しみに。
そう、すべては愛ゆえに!
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